競馬予想で新生活

さあ行くぞと馬自身が気持ちを引き締めているように感じた。
今の日本の競馬は、馬が機械的にとらえられている面が多過ぎると思う。 数字、データといったものが参考にならないとはいわない。
だが、それだけをうのみにするのは危険なことだ。 さて、今週のK通信杯4歳S、成長途上の4歳馬に乗る騎手は、馬の気持ちに逆らわず、走ることを楽しくさせなければならない。
そして勝つことによって自信をつけさせる。 ボクが乗るコクサイロイヤルはこのレースに挑戦して自信を失うような心配はないが、まだ走るのが楽しいという城までは達していない。
何とかしてここで走ることに自信を持たせたいという気持ちだ。 1800メートルという距離も重要である。
1600メートルはスプリント・タイプとスタミナ・タイプのどちらにもチャンスがある距離と書いたが、1800メートル、それもごまかしのききにくい広い東京では後者に分が出てくる。 このレースの内容で、2000メートルの皐月賞、2400メートルのダービーでの可能性がある程度判断できるのだ。
ボクは48年にスピードリッチ、59年にビゼンニシキで、このレースを二度勝っているが、2頭ともダービー2400メートルへの懸念が感じられたものだ。 (2月7日)目黒記念でボクが騎乗するのはキリパワー。

残り少なくなったパーソロンの産駒の1頭だ。 シンボリルドルフをはじめ、ボクはパーソロンの子にずいぶんと縁がある。
きょうは種牡馬パーソロンに触れてみる。 血統は競馬の基本的なもの。
騎手にとっても、知る必要があることだ。 血統専門家のように詳しく語れるわけではないが、それでも特定の種牡馬の子に多く乗っていると、個性を肌で知るものだ。
その中でもボクにとって代表的なのがパーソロン。 机上の計算だと、子どもは父母から50パーセントずつ特性を受け継ぐことになるが、そこは遺伝の不可思議性。
計算通りにいくわけではなく、超一流といわれる種牡馬は、50パーセント以上の影響を感じさせる場合が多い。 パーソロンもそのクチだ。
概して産駒は素直で、レースで騎手の意のままになりやすい。 これは重要なことである。
距離面の万能性につながるのだ。 ボクは距離適性というものは気性と体型(ズングリ型は短距離向き、パーソロン産駒にもこのタイプはいる)がかなり影響すると考えているが、それは数多くのパーソロン産駒の騎乗体験で得たものが大きい。
昭和46年のオークスで、初めてボクに大レース制覇をプレゼントしてくれたカネヒムロというパーソロン産駒がいた。 マイラー・タイプで、2400メートルに不安を感じさせていたものだが、素直な馬でアッサリ乗り切ってしまった。
パーソロンの最高傑作が7冠馬シンボリルドルフ。 オールマイティーの活躍をした彼も、騎手の意のままにレースができる性格だった。
本質的には2000〜2200メートルがベストだったが、カネヒムロの経験からどんな距離にも不安を持たずに乗れたものだ。 パーソロン産駒は実戦型であるという点も強調できる。
例えば、ゲート練習が平凡でも実戦では驚くほどいいスタートを切ったり、調教で動かなくても実戦では変わることがある。 いってみればいいウソをつくタイプがパーソロンだ(悪いウソをつく種牡馬にもいずれ触れよう)。

大局的にみれば、パーソロンの穏やかな気性は日本向きといえるかもしれない。 馬とのふれ合いでは日本の競馬は残念ながらまだ欧米に遅れている。
気性の激しい馬を扱い切れない一面が残っているというのが、ボクの素直な見解だ。 気性の激しいタイプは、一日中馬房に閉じ込められる全休日制度のある中央競馬には向かないこともある。
ところが、パーソロンのような温和で忍耐強い性格はそういった逆境を克服できるのだ。 パーソロンについてはまだまだ触れることが残っているが、折をみて書くとして、さしあたって目黒記念でのキリパワー。
この馬もパーソロンの血が50パーセント以上感じられる、良い性格だ。 母キンセイパワー(父アローエクスプレス)はカブトヤマ記念(1800メートル)を勝ったマイラー・タイプだったが、キリパワーの長距離をこなせそうな体型と性格からみて、2500メートルでもそれほど懸念していない。
(3月14日)キリパワーでGU重賞・目黒記念を勝つことができた。 ボクはこれをチームワークがもたらした勝利だと思っている。
競馬の世界においてもチームワークは重要である。 それがなければ今のキリパワーはなかっただろう。

キリパワーは先週も触れたように名種牡馬パーソロンの産駒で、母がカブトヤマ記念を勝ったキンセイパワー。 なかなかの血統馬で、ふつうならクラシックへ、と考えたくなるものだ。
ボク自身にも実際、その気持ちはあった。 デビューは4歳の昭和63年の2月28日と遅かったが、うまく使っていけばクラシックに間に合う。
事実、この年、ヤエノムテキは2月27日にデビューし皐月賞を勝っているのだ。 ところがキリパワーはそうはいかなかった。
デビュー前に乗った時は、弱々しさが感じられ、平凡な動きしかみせなかった。 ふつうならデビューを延ばすケースだが、それでも先週書いたようにパーソロン産駒は調教で平凡でも実戦に行って変わるケースが往々にしてあるという考えから、とりあえず出走させてみることになった。
結果は13頭立ての13着。 勝ち馬から6秒7も離れての大敗だ。
ボクの思いちがいだった。 この時点で体が弱いということがはっきりした。
ゆっくり育て大望は古馬になってから――と感じたボクは、素直な気持ちをK調教師にぶつけてみた。 K調教師は意見を取り入れてくれた。
その後キリパワーはひと息入れ、しばらくは楽な相手との対戦を続け、徐々に力をつけていった。 現在のキリパワーがあるのは、デビュー戦後のK調教師とボクとのコミュニケーションによるところが大きかったのではないかと思っている。
他の馬についてもK調教師とはよく意見を交わす。 シジノショウグンが前走のT新聞杯時、遮眼革をはずして臨んだのも話し合いの結果だった。

まだ完調手前で5着に敗れたが、いずれ功を奏すのではないだろうか。 昨年のジャパンC翌日、競馬学校騎手課程の生徒に対する、ヨーロッパの第1人者P騎手の講義を取材したSスポーツのK記者によると、P騎手は「騎手はレースが終わったら、調教師に感じたままのことを必ずいうべきである」といったそうだ。
まさしくその通り。 ボクのアメリカの体験でも、現地の騎手は皆そうしているし、ボク自身、乗った馬の調教師から意見を求められることが多い。
遮眼革を着けた方がいいと感じた馬がいた場合、それをストレートに調教師に伝えると、次走は着用して好走したことが何度かあったものだ。 馬を育てるうえで、関係者同士のコミュニケーションがいかに大事なことか。
さて、今週のメーン、中山牝馬Sでボクが騎乗するのはストロングレディーだ。 N調教師ともよく意見を交わす。
ストロングレディーの場合はキリパワーのように特筆するようなことはないが、オープンで活躍しているのは、チームワークの成果が少なからずあるからだろう。 6歳になった今、ピークを過ぎたかなという不安はなくもないが、昨年2着の雪辱をと思っている。

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